モワット・ウィルソン症候群(成人)

診断基準

モワット・ウィルソン症候群の診断基準
 Definite、Probable を対象とする。

A.症状

Major Criteria

  1. 重度(中等度)精神運動発達遅滞(必須)
  2. 特徴的な顔貌(必須):下記の 3 項目の内の 2 項目以上
    1. 特徴的耳介形態(前向きに持ち上がった耳たぶ。中央が陥凹した耳たぶ)
    2. 特徴的眼周囲所見(眼間開離、中央部が濃い眉毛)
    3. 特徴的頭部形態(細長い顔、尖ったあご、目立つ鼻柱)
  3. 小頭症

Minor Criteria

  1. 巨大結腸症(ヒルシュスプルング病)、難治性便秘
  2. 細長い手指と四肢
  3. 成長障害
  4. 脳梁形成異常
  5. 先天性心疾患
  6. てんかん
  7. 腎泌尿器奇形

参考所見

  1. 中耳炎
  2. 側弯症

B.検査所見

 1.血液・生化学的検査所見:異常なし。
 2.画像検査所見:脳 MRI で約半数の患者に脳梁の形成異常が見られる。
 3.生理学的所見:報告なし。
 4.病理所見:報告なし。
 5.知能検査(IQ、DQ):重度あるいは中等度知的障害。

C.鑑別診断

以下の疾患を鑑別する。

  1. Goldberg-Shprintzen megacolon 症候群:常染色体劣性の疾患であり、病因遺伝子は 10q22.1 に局在
    するKIAA1279 遺伝子である。
  2. アンジェルマン症候群、1p36 欠失症候群、ルビンシュタイン・テイビ症候群:これらの疾患は、精神遅
    滞が重度で言葉がなく、下顎が目立ち、歩容(不安定な歩き方)の点でモワット・ウィルソン症候群に類
    似している。しかし、モワット・ウィルソン症候群とは特徴的顔貌の有無で容易に鑑別できる。

D.遺伝学的検査

片方の ZEB2(別名、ZFHX1B、SIP1)遺伝子に機能消失性変異(欠失、ナンセンス変異、フレームシフト変異) が同定されれば、確定診断とする。

〈診断のカテゴリー〉

(Major Criteria の1と2の 2 項目は、全症例に認められる。)

Definite:
Major Criteria のうち3項目、あるいは、Major Criteria のうち 2 項目と Minor Criteria 3 項目 以上を満たし、C を除外し、D を満たすもの。
Probable:
Major Criteria のうち3項目、あるいは、Major Criteria のうち 2 項目と Minor Criteria 3 項目 以上を満たし、C を除外したもの。
Possible:
Major Criteria のうち 2 項目と Minor Criteria 2項目以下を満たすもの。

 

重症度分類

1)~ 3)のいずれかに該当する者を対象とする。

  1. 難治性てんかんの場合:主な抗てんかん薬2~3種類以上の単剤あるいは多剤併用で、かつ十分量で、2 年以上治療しても、発作が1年以上抑制されず日常生活に支障をきたす状態(日本神経学会による定義)。
  2. 先天性心疾患があり、NYHA 分類でⅡ度以上に該当する場合。
  3. 気管切開、非経口的栄養摂取(経管栄養、中心静脈栄養など)、人工呼吸器使用の場合。

※上記の診断基準・重症度分類を満たせば、小児であっても認定を受けることができる

引用:
「Mowat-Wilson 症候群の臨床診断の確立と疾患発症頻度の調査」
「Mowat-Wilson 症候群の診断法の確立と成長発達に伴う問題点とその対策に関する研究」
(研究代表者 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 副所長兼遺伝学部長 若松延昭)

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