ロイス・ディーツ症候群(小児)

診断方法

A.症状

原因遺伝子(TGFBR 1、TGFBR 2、SMAD 3、TGFB 2、TGFB 3 遺伝子等)に変異を認めればロイス・ディーツ症候群と診断が確定する。変異を認めない場合には、「水晶体亜脱臼・水晶体偏位を認めず」、かつ、下記の主要臨床症状のうち全項目を満たすか、ロイス・ディーツ症候群の家族歴を有して主要臨床症状1つを満たせば臨床診断される。

主要臨床症状

  1. 過伸展を伴う長い指、側弯、胸部変形等を含む身体所見
  2. 大動脈基部病変
  3. 特徴的顔貌として以下のi)、ii)、iii)、iv)の3 項目以上
  1.  眼間開離または斜視
  2. 口蓋裂または二分口蓋垂
  3. 小顎・顎後退または頬骨低形成
  4. 頭蓋縫合早期癒合

B.検査所見

マルファン症候群では動脈病変は大動脈本幹に限定されるが、ロイス・ディーツ症候群では、総腸骨動脈、鎖骨下動脈、上腸間膜動脈、脳動脈、冠動脈などの分枝動脈にも及ぶため、全身血管のスクリーニングが必要である。動脈蛇行も特徴的であるが、特に頭頚部の動脈で高頻度に見られ、マルファン症候群との鑑別の上でも診断的価値が高い。動脈管開存・心室中核欠損、心房中隔欠損、大動脈二尖弁などの先天性心奇形の合併は当初より指摘されていたが、実際にはそれほど多くはない。僧帽弁逸脱は認めることもあるが、
高度の閉鎖不全を伴うことは少ない。
SMAD3遺伝子変異によるLDS3では、早期発症の骨関節症が特徴的であり、若年発症の変形性骨関節症に伴う指趾骨や脊椎骨の変形や骨折、骨端症、関節炎等を高頻度に認めるとされるが、小児期にはこれらの症状はほとんど認めない。

C.遺伝学的検査等

TGFBR 1、TGFBR 2、SMAD 3、TGFB 2、TGFB 3遺伝子等に変異を認める。

D.鑑別診断

しばしばマルファン症候群との鑑別が必要となる。
マルファン症候群で高頻度にみられる水晶体偏位は認めない。気胸はマルファン症候群同様に認めるが、合併頻度は低いとされる。脊髄硬膜拡張もしばしば認める。頭蓋骨縫合早期癒合症や水頭症に伴うものを除けば、知的発達は正常とされる。

E.確実例

大小動脈瘤・動脈解離・動脈蛇行などの血管病変、マルファン症候群類似の骨格病変、特徴的顔貌などを有し、TGFBR 1、TGFBR 2、SMAD 3、TGFB 2、TGFB 3遺伝子等に変異を認める。

該当事業における対象基準

  • 治療で強心薬、利尿薬、抗不整脈薬、抗血小板薬、抗凝固薬、末梢血管拡張薬又はβ遮断薬※のうち1つ以上が投与されている場合
  • 又は、大動脈破裂の場合若しくは破裂が予想される場合

以上のいずれかを満たす場合

※巻末(334 頁)、平成26 年度厚生労働省告示第475 号も参照のこと

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