エーラス・ダンロス症候群(成人)

指定難病:診断基準・重症度分類

診断基準

以下のいずれかの病型として確定診断された場合と古典型エーラス・ダンロス症候群については臨床診断された場合を対象とする。

  病型ごとの詳細な診断基準
古典型

A.症状の大基準を全て認める場合、古典型エーラス・ダンロス症候群と臨床診断する。A.症状の大基準のうち2項目を有することより古典型エーラス・ダンロス症候群を疑い、B に該当する場合も、古典型エーラス・ダンロス症候群と診断が確定する。

  1. 症状
    〈大基準〉皮膚過伸展性(※別表1、85 頁参照)、萎縮性瘢痕(※別表1、85 頁参照)、関節過動性(※別表2、85 頁参照)
    〈参考所見:小基準〉スムーズでベルベット様の皮膚、軟属腫様偽腫瘍、皮下球状物、関節過動性による合併症(捻挫、脱臼、亜脱臼、扁平足)、筋緊張低下・運動発達遅滞、内出血しやすい、組織過伸展・脆弱性による合併症(裂孔ヘルニア、脱肛、頸椎不安定性)、外科的合併症(術後ヘルニア)、家族歴
  2. 遺伝学的検査
    COL5A1、COL5A2 遺伝子等の変異(古典型 EDS)
関節型

A.症状を複数認めることにより関節型エーラス・ダンロス症候群を疑い、Bに該当する場合、関節型エーラス・ ダンロス症候群と確定診断される。

  1. 症状
    〈大基準〉全身性関節過動性、柔らかい皮膚、皮膚・関節・血管・内臓脆弱性なし  〈小基準〉家族歴、反復性関節(亜)脱臼、慢性疼痛(関節、四肢、背部)、内出血しやすい、機能性腸疾患(機能性胃炎、過敏性腸炎)、神経因性低血圧・起立性頻脈、高く狭い口蓋、歯芽密生
  2. 遺伝学的検査
    TNXB 遺伝子等の変異(関節型 EDS の少数例)
血管型

A.症状を複数認めることにより血管型エーラス・ダンロス症候群を疑い、BもしくはCに該当する場合、血管 型エーラス・ダンロス症候群と確定診断される。

  1. 症状
    〈大基準〉動脈破裂、腸管破裂、妊娠中の子宮破裂、家族歴
    〈小基準〉薄く透けた皮膚、内出血しやすい、顔貌上の特徴、小関節過動性、腱・筋肉破裂、若年発症静脈瘤、内頚動脈海綿静脈洞ろう、(血)気胸、慢性関節(亜)脱臼、先天性内反足、歯肉後退
  2. 検査所見
    生化学所見:培養皮膚線維芽細胞中のⅢ型プロコラーゲン産生異常
  3. 遺伝学的検査
    COL3A1 遺伝子等の変異
後側彎型

A.症状を複数認めることにより後側弯型エーラス・ダンロス症候群を疑い、BもしくはCに該当する場合、後 側弯型エーラス・ダンロス症候群と確定診断される。

  1. 症状
    後側彎型 EDS:  〈大基準〉皮膚脆弱性・皮膚過伸展性(※別表1、85 頁参照)、全身関節弛緩、筋緊張低下、進行性側彎、眼球破裂(強膜脆弱性)  〈小基準〉萎縮性瘢痕(※別表1、85 頁参照)、マルファン症候群様の体型、中等度サイズ動脈の破裂、運動発達遅滞
  2. 検査所見
    生化学所見:①尿中リジルピリジノリン/ ヒドロキシリジルピリジノリン比上昇
  3. 遺伝学的検査
    PLOD 遺伝子等の変異
多発関

節弛緩型A.症状を複数認めることにより多発関節弛緩型エーラス・ダンロス症候群を疑い、BもしくはCに該当する場合、多発関節弛緩型エーラス・ダンロス症候群と確定診断される。

  1. 症状
    〈大基準〉反復性亜脱臼を伴う重度全身性関節過動性(※別表 2、85 頁参照)、先天性両側股関節脱臼
    〈小基準〉皮膚過伸展性(※別表1、85 頁参照)、組織脆弱性(萎縮性瘢痕(※別表1、85 頁参照)を含む)、内出血しやすい、筋緊張低下、後側彎、骨密度低下
  2. 検査所見
    生化学所見:Ⅰ型プロコラーゲンプロセッシングの異常
  3. 遺伝学的検査
    COL1A1、COL1A2 遺伝子等の変異
皮膚弛緩型

A.症状を複数認めることにより皮膚脆弱型エーラス・ダンロス症候群を疑い、BもしくはCに該当する場合、 皮膚脆弱型エーラス・ダンロス症候群と確定診断される。

  1. 症状
    〈大基準〉重度の皮膚脆弱性、垂れ下がりゆるんだ皮膚
    〈小基準〉内出血しやすい、前期破水、大きいヘルニア(臍、そけい)
  2. 検査所見
    生化学所見:Ⅰ型プロコラーゲンプロセッシングの異常
  3. 遺伝学的検査
    ADAMTS2 遺伝子等の変異

重症度分類

  1. 小児例(18 才未満) 小児慢性特定疾病の状態の程度に準ずる。 疾患名に該当する場合。
  2. 成人例 1)~3)のいずれかに該当する者を対象とする。
    1. 心疾患があり、薬物治療・手術によっても NYHA 分類でⅡ度以上に該当する場合。
    2. (当該疾病が原因となる解離や梗塞などの)動脈合併症や消化管を含む臓器破裂を1回以上発症した場合。
    3. 患者の手掌大以上の皮下血腫が年間5回以上出現した場合(ただし、同じ場所に出現した皮下血腫は一旦 消失しないものについては 1 回と数えることとする。また、異所性に出現した場合に同時発症の際は2回 まではカウント可とする)。
別表1:皮膚過伸展評価

1)皮膚過伸展L(cm)    

  • 0 点 3.0cm 未満
  • 1 点 3.0 以上-4.0cm 未満    
  • 2 点 4.0 以上-5.0cm 未満    
  • 3 点 5.0cm 以上

2)萎縮性瘢痕(外傷を受けやすい四肢、顔面前額の隆起しない長径1cm 以上の白色萎縮性瘢痕)        

  • 0 点 なし
  • 1 点 1-2 個
  • 2 点 3-5 個
  • 3 点 6 個以上

診断基準:

  • 皮膚過伸展 と萎縮性瘢痕を合計して4点以上を陽性とする。  
  • なお、前腕皮膚過伸展テストを行う際は、下記の通り実施する。 前腕皮膚過伸展テスト
別表2:関節過動性 (Beighton による関節可動性亢進 判定基準)
関節/ 所見 陰性 片側 両側
手関節の過伸展により手指と前腕が平行になる 0 1 2
拇指の過屈曲による前腕との接触 0 1 2
肘関節の10 度以上の過伸展 0 1 2
膝関節の10 度以上の過伸展 0 1 2
膝伸展位で脊柱を前屈させ手掌が床につく 0

5 点以上で関節可動性亢進とみなされる。

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